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「死んでしまったのだから、"置いていかれた"モノがどうなろうと、あの彼には関係のない話だ。"神"のごとく奇跡的な復活でも遂げない限り、この身がなくなれば全て終いだからね。死者の面影に縋り、それまでの生に意味を与えようとするのは、"置いて行かれた"側の未練でもあるが、身勝手でもである。愛というのは、実に奥深く、厄介だな。だからこそ、愛おしいのだが」
ゴマ団子を咀嚼して、充希はのんびりと窓を見上げた。
「考え、選択できるのは"生"を持つモノだけだ。己が正しいと思い選んだ道が、そのモノにとって"正しい愛"なのだろう」
遠い過去を慈しむような瞳。彼も"置いていかれた"経験があるのだろう。そう思わざるを得ない表情だ。
未だ謎の多い、世界で唯一の"ヴァンパイアキラー"。
俺には想像できない程の重圧を、迫害を背負ってまで"生"を選ぶ彼には、いったい、どんな"未練"があるのだろうか。
「……おや?」
何かに気づいた充希が、団子を口で咥えて袋を手に取った。
「お行儀悪いですよ」
「ふふぁんふふぁん……っと、見てくれ」
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