最後の逢瀬

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 すっかり染みついてしまった習慣を問いかけながら立ち上がり、扉を開く。  途端、虚を突かれ静止した。  そこにいたのは確かに充希なのだが、つい先程まで着ていた黒地の寝間着ではない。  濃紺のスラックスを履き、柔らかな黒いカットソーに同色のカーディガンを羽織っている。 「……外出ですか?」  部屋の時計を振り返ると、既に二十三時を過ぎている。  コンビニ……にしては、めかしこんでいるような。 「ちょっと待っててください。俺もいま着替えを――」 「これはあくまで相談なんだが」  部屋に戻ろうとした俺を、充希が呼び止める。 「"アバンチュール"のお誘いを受けてね。帰りはきっと遅くなるだろう。だが明日は忙しくなるというのに、これから巧人を連れ出すのも忍びない。そこでだ、キミのボスにお伺いを立ててみるのはどうだろう? 警察お抱えのタクシーに乗れば、巧人の護衛も監視も不要になる」 (つまり、"逢引"に出たいけれど、俺がついてくるのは嫌だってことか) 「……お相手のことは詮索しませんが、もしもその方が充希さんを狙っていたら」
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