最後の逢瀬

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 向こう側で微かに、カチカチとキーボードを叩くような音がした。 (何をチェックしてるんだ?)  八釼の邪魔にならないよう、息を殺して次の指示を待つ。  と、数十秒後に『……待たせた』と声がした。 『こちらから夜勤の者を飛行警備車両で向かわせる。三十分後に、屋上で待機していてくれ』 「っ、いいんですか? 充希さんはああ言ってますけど、密会相手が本当に無害なのか――」 『麻野』 「!」  名を呼ぶ重い声に、思わず息を詰める。 『……お前には、(こく)な役目を背負わせてしまって、本当にすまない』 「っ、だから、これは俺が決めた事だって」 『ほんの数時間だが、ゆっくり休んでくれ。彼への伝達と、屋上への誘導を頼んだぞ』  通話が切れる。八釼のことだ、俺の反論を見込んでワザと強制的に切り上げたのだろう。  上司からの"命令"は、即ち国の意志。  いくら納得出来なかろうが、ただの"駒"である俺は従うほか道はない。 「……ウチから飛行警備車両を出すそうです。三十分後に、屋上に向かいます」
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