28人が本棚に入れています
本棚に追加
朝焼けの真実
急く気持ちを必死に押さえつけながら、薄暗い入院病棟の廊下を足早に進む。
空気が冷たい。それに、患者はみな寝静まっているというのに、どこか落ち着きのない気配。
――それもそうか。
人が死んだんだ。それも、"ヴァンパイアキラー"が一枚かんでいる。
目的の病室を視界に入れ、俺は自嘲気味に口角をつり上げた。
扉横には見知った顔。清だ。そうだろうと思っていた。
全ての事情を知ったうえであの人を"護衛"出来る隊員は、ごくわずかだ。
「……八釼さんは?」
これまで着用していた警備服ではなく、スーツ姿の清は前を見据えたまま、
「戻った」
「……そうか」
俺は視線を閉じられた扉へと向ける。
静かだ。それなのになぜか、わかってしまう。
――あの人が、呼んでいる。
腹底から這い上がってくる、緊張、後悔、それからたぶん、苛立ち。
俺は導かれた操り人形のように、扉に手をかけた。刹那。
「!」
息を詰めたのは、清が俺の手を掴み、止めたからだ。
驚愕に視線を跳ね上げた俺を、赤い瞳が射貫く。
「俺サマが行ってもいいんだぞ」
「っ」
驚いた。いや、清なら言うか。
最初のコメントを投稿しよう!