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「さあ、巧人。全てを知る時間だ」
布袋の中に入っていたのは、特異機動隊で管理しているノートパソコンだった。
おそらく八釼が用意したのだろう。そうでなければ、ここにあるはずがない。
窓際の長机に設置し開いて、セキュリティーコードを打ち込んだ。昨日ここには、彼女の退院を祝うためのケーキとシャンパンが乗っていた。
画面のロックが解除される。
まっさらなデスクトップに、見知った監視システムのアイコンがひとつ。
クリックすると、コピーされた映像データが入っている。おそらく、充希のいう"アバンチュール"がここに記録されているのだろう。
これもまた、八釼が用意したに違いない。
認証画面で、俺の個人IDと専用のパスワードを入力した。
認証しました。表示された文字を確認して、俺は再生の準備を整える。
画面に、この部屋の扉を開けた直後の、充希の姿が映った。再生を選択すれば、この静止画が動きだす。
「さて。心の準備はいいね、巧人」
操作権は俺にあるというのに、まるで運命の賽を握るのは自身だとでも言うような。
――冗談じゃない。決めるのは、俺だ。
「……始めますよ」
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