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「キミがそう決めたのなら、僕に断る理由はない。だがそうだな……許されるのなら、そう望むに至った経緯を話してくれないか?」
「……長くなりますよ?」
「なあに、夜はまだ始まったばかりだ。それに――きっと巧人は、混乱するだろうから」
苦笑気味に肩を竦めた充希さんに、私も小さく笑って頷いた。
想像できる。あの人が全てを知ったとき、深く深く傷つくのも。
「……恨まれちゃいますかね、私」
「とんでもない。悲しむであろうことは明白だが、恨みなどしないさ。僕が保証しよう。ただ……彼は心から、キミが"生きて"他の国に飛ぶものだと信じているからね。出来れば置手紙代わりに、キミの"真実"を彼に残してくれないか」
急ぐ旅ではないだろう、と重ねる声は柔らく、まるで子供に言い聞かせているかのよう。
実際、その通りなのかもしれない。
その血で"VC"の命を絶つ、"ヴァンパイアキラー"。
正直、未だに私には、その肩書と彼自身がうまく結びつかない。
だけれど、彼は私が想像するよりもずっと沢山の"死"を見てきたのだと思う。
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