バーベナの告白

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「ご覧の通り犯人は逮捕され、少なくとも数十年は塀の中です。忘れろとはいいません。いえ、忘れることはできないでしょう。けれどもあの塀を越えなければ、復讐も不可能です。なにより、"N"であるあなたの方が、先に死ぬ確率が高い。ですのでどうか、いずれ時が来たら、貴方の"命"を生きてください。今はその時まで、その守られた命を、繋ぎましょう」  退院後、当時勤めていたアパレル会社を退職した私は、貯金を切り崩しながら、一年ほど先生の元へ通った。  両親の死によって支払われたお金には、手を付ける気にならなかった。  過ぎた時間の影響か、治療の効果か。気づけば人らしい日常生活を送れるまでになっていた私は、新宿に拠点を移し、再就職をした。  理由は単純。生きていくにはお金が必要だったし、何より私は大切な人の命を奪った"VC"なんかと、日常を共になんてしたくはなかったからだ。  私の決めた会社は、秘密裏に"VC"は"VC"だけのフロアにて仕事をさせる、『ホワイトアウト企業』だった。  雇ってもらえたのは、"通り魔的吸血事件"の被害者を雇用したという、会社の"実績"になるからだというのは理解していた。
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