バーベナの告白

14/29
前へ
/254ページ
次へ
 なんていったっけ。そうだ、確か、アメジスト。  この瞳は既に全てを見透かしている。そう感じるには十分なほど、確信めいた色が強い。  となるときっと――この問いは、野際さんのため。  そっか、この二人は。"家族"ではないけれど、"特別"の関係。  だからこうして、"心"を大切にしたいのだろう。  なにも知らない彼は、いまごろ温かな布団の中。私は微笑ましい気持ちを胸に、優しい彼を想って答えた。 「私は、"VC"が憎いんです」  私にとって二度目の吸血事件となったあの日。  出先から会社に戻る前にと、私はよく利用するカフェで遅い昼食をとっていた。  この店は大通り沿いに面した位置に、カウンター席がある。右から三番目の席が、私のお気に入りだった。  時折スマホを弄りながら、アイスティーとクリームパスタを咀嚼する。  と、ふと見遣った窓の外に、小さな花畑を見つけた――ように、空目した。 (っ、間違えた)  女の子だった。ようやく顔を覗かせ始めた春を切り取ったような、淡くも主張する薄紅色の花が描かれたワンピースを着ている。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加