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なんていったっけ。そうだ、確か、アメジスト。
この瞳は既に全てを見透かしている。そう感じるには十分なほど、確信めいた色が強い。
となるときっと――この問いは、野際さんのため。
そっか、この二人は。"家族"ではないけれど、"特別"の関係。
だからこうして、"心"を大切にしたいのだろう。
なにも知らない彼は、いまごろ温かな布団の中。私は微笑ましい気持ちを胸に、優しい彼を想って答えた。
「私は、"VC"が憎いんです」
私にとって二度目の吸血事件となったあの日。
出先から会社に戻る前にと、私はよく利用するカフェで遅い昼食をとっていた。
この店は大通り沿いに面した位置に、カウンター席がある。右から三番目の席が、私のお気に入りだった。
時折スマホを弄りながら、アイスティーとクリームパスタを咀嚼する。
と、ふと見遣った窓の外に、小さな花畑を見つけた――ように、空目した。
(っ、間違えた)
女の子だった。ようやく顔を覗かせ始めた春を切り取ったような、淡くも主張する薄紅色の花が描かれたワンピースを着ている。
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