バーベナの告白

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 アッシュピンクの、柔らかく波打つ髪。見える肌の色は、私とそう大差ない。  "N"だ。無意識化に判断しながら、私はアイスティーのストローを咥えた。  彼女は大通りを挟んだ向こう側で、スマホを両手で握りしめながらキョロキョロと周囲を見渡している。  待ち合わせ、なのだろう。彼女は意中の相手がいないとわかると、建物側へ数歩後退し、手中のスマホへと視線を落とした。 (……へんなの)  大通り沿いとはいえ、平日のこの辺りの人通りは極端に少ない。  目立ったショッピングモールもなければ、写真映えするモニュメントもない。  どちらかと言えば、社会の歯車として躍起になっている私みたいな人間が、疲れた顔で通り過ぎて行くような道だ。  こんな場所を指定するなんて、彼女の待ち人は会社勤めの人なのだろうか。  雰囲気からしてデートだろうな、と憶測を立てながら、私は野次馬心で観察する。 (……可愛い子)  肩下まで伸びた髪はしっかり手入れが行き届いていて、化粧も派手すぎず愛らしい。
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