バーベナの告白

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 二十代前半だろうか。まだ時折吹く風は冷たさを残しているといのに、ワンピースから伸びる脚は素肌のようで、細く華奢なヒールが良く似合う。  寝ぐせ隠しにと髪をくくり、ロングパンツばかりの私とは、まるで正反対。  眩しいその姿に、双眸を細める。  彼女がこれから歩む人生は、きっと、あの服に描かれた花々のごとく美しく温かいのだろう。  たくさんの愛に囲まれて。たくさんの幸福に、愛でられて。  絶望の淵に垂らされた蜘蛛の糸に縋って、"呪い"を抱えながら生きる私には遠く及ばない存在。  羨ましい、のだろうか。どうだろう。なんだか少し、違う気がする。  たぶん私には、自分の"これからの人生"を想像するだけの希望も活力もないのだろう。  ただただ思うのは、どうかあの彼女には幸せになってほしいという、身勝手な願望だけ。  映画のスクリーンのように目だけで追っていると、たっぷりの時間を置いてから、顔を上げた彼女が笑顔を咲かせた。  待ち人が来たのだろう。パスタはすっかり片付いていて、残り僅かなアイスティーは溶けた氷で薄まり、飲めたものじゃない。 (……行こうかな)
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