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("Vampire Virus"<吸血鬼化ウイルス>――"V-2"感染者による犯行か)
左手首につけた腕時計――もとい、腕時計型通信機を操作して、警視庁警備部特異機動隊の本部へと緊急要請連絡をする。
「――麻野です。新宿七丁目にて、女性の遺体を発見しました。頚部に吸血痕あり。"VC"の犯行と思われます。まだ犯人は付近にいると考えられるため、追跡を開始します。至急、出動をお願いします」
(……これでよし)
俺が発信した時点で、本部は時計に仕込まれたGPSを頼りに動き出しているだろう。
そう経たないうちに、"仲間達"がくる筈だ。俺は俺の"仕事"をしなければ。
視線を周囲に走らせると、路上に点々と血痕が落ちている。
(逃走に必死で気づかなかったのか? 白昼堂々と、こんな公道で"吸血"とは……衝動任せの初犯か)
刹那、轟いた叫び声。
血痕の方向。おそらく、また女性だ。そう遠くはない。
俺は咄嗟に駆け出そうとしてから気づき、「しまった」と身を屈めた。
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