バーベナの告白

22/29
前へ
/254ページ
次へ
 充希さんが"ヴァンパイアキラー"だと知ったのは、二人が初めて会いに来てくれた時。  野際さんに花を任せた充希さんが、こっそりと小さな紙を渡してきたのだ。  なんてことない雑談を口にしながら、唇に人差し指を立てて"秘密"だと合図する。  そうして受け取った紙を開いた私は、少し不格好な字で書かれていた内容に、息を呑んだ。 『僕はヴァンパイアキラーだ。僕の血はVCを殺す』  心臓が、強く跳ねた。  死んだのだと思っていた"私"が、期待に、目を覚ます。  翌日には、心は決まっていた。  私は死ぬ。死ねるのだ。  途端、視界が開けて、気力が溢れてきた私は死ぬための準備を始めた。  会社を辞め、鐘盛さんに連絡して、最期の我儘を許してもらう。  部屋の中身を処分してほしい、と告げた私に、鐘盛さんは驚いていた。  電話をする前から、混乱させるってわかっていた。鐘盛さんが私の"お願い"を、断れないってことも。  けれどもまさか、野際さん達に会いにいくとは。  それだけ、心配させてしまったんだと思う。それは毎日交わす電話からも、痛いほど伝わって来た。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加