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充希さんが"ヴァンパイアキラー"だと知ったのは、二人が初めて会いに来てくれた時。
野際さんに花を任せた充希さんが、こっそりと小さな紙を渡してきたのだ。
なんてことない雑談を口にしながら、唇に人差し指を立てて"秘密"だと合図する。
そうして受け取った紙を開いた私は、少し不格好な字で書かれていた内容に、息を呑んだ。
『僕はヴァンパイアキラーだ。僕の血はVCを殺す』
心臓が、強く跳ねた。
死んだのだと思っていた"私"が、期待に、目を覚ます。
翌日には、心は決まっていた。
私は死ぬ。死ねるのだ。
途端、視界が開けて、気力が溢れてきた私は死ぬための準備を始めた。
会社を辞め、鐘盛さんに連絡して、最期の我儘を許してもらう。
部屋の中身を処分してほしい、と告げた私に、鐘盛さんは驚いていた。
電話をする前から、混乱させるってわかっていた。鐘盛さんが私の"お願い"を、断れないってことも。
けれどもまさか、野際さん達に会いにいくとは。
それだけ、心配させてしまったんだと思う。それは毎日交わす電話からも、痛いほど伝わって来た。
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