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こうして綺麗なワンピースを纏うことも、唇に美しい花の色を乗せることもなく。
ああ。こんなに身も心も満たされているのは、いつぶりだろう。
「私は、すっごく幸せです。こんなに幸せでいいのかなって、ちょっと不安になるくらい。……死ねることが"幸せ"なんて、他の人には理解出来ないかもしれないですけど、それでも私にとっては紛れもない事実」
私はとびっきりの感謝を込めて、充希さんに微笑んだ。
「向こうで父と母に会ったら、お二人のこと、たくさん話そうと思ってるんです。楽しくて、親切で、私を救ってくれた"恩人"なんだよって。それから三人で、祈りますね。充希さんが、野際さんが……これからもずっと仲良く、幸せでありますようにって」
都合の良い、独りよがりで身勝手な計画。
裏切ったくせに調子のいいことをって、疎まれても無理はない。
それでももう、私にできることはこの世にはないから。
見守るなんておこがましい。だからせめて、感謝を込めた祈りを。
「……いやあ、本当に惜しい」
緩く首を振った充希さんが、柔い瞳で私を映す。
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