バーベナの告白

25/29
前へ
/254ページ
次へ
 こうして綺麗なワンピースを纏うことも、唇に美しい花の色を乗せることもなく。  ああ。こんなに身も心も満たされているのは、いつぶりだろう。 「私は、すっごく幸せです。こんなに幸せでいいのかなって、ちょっと不安になるくらい。……死ねることが"幸せ"なんて、他の人には理解出来ないかもしれないですけど、それでも私にとっては紛れもない事実」  私はとびっきりの感謝を込めて、充希さんに微笑んだ。 「向こうで父と母に会ったら、お二人のこと、たくさん話そうと思ってるんです。楽しくて、親切で、私を救ってくれた"恩人"なんだよって。それから三人で、祈りますね。充希さんが、野際さんが……これからもずっと仲良く、幸せでありますようにって」  都合の良い、独りよがりで身勝手な計画。  裏切ったくせに調子のいいことをって、疎まれても無理はない。  それでももう、私にできることはこの世にはないから。  見守るなんておこがましい。だからせめて、感謝を込めた祈りを。   「……いやあ、本当に惜しい」  緩く首を振った充希さんが、柔い瞳で私を映す。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加