バーベナの告白

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「はい。お時間頂いて、ありがとうございました。私も、凄く楽しかったです」  掌から"マリア"を摘まみあげて、目の前にかざす。 「……赤い実を食べて死ぬなんて、なんだか白雪姫みたい」 「だが、その実は王子の到着を待ってはくれないよ」 「優秀なリンゴさんですものね。せめて彼女みたいに、綺麗な姿で死ねるといいのだけど」  さあ、これで本当に、終わり。  大丈夫、忘れ事はないと頭の中でチェックリストに印をつけて、私は充希さんを見上げた。 「充希さん」 「なんだい?」 「充希さんは、初めから気付いていたんですね。だから、私にバーベナを」  窓際から静かに見守る、この唇と同じ色をしたバーベナは、日に日に花を散らし、そろそろ寿命を迎えるだろう。 「充希さんの言ったとおり、あの花は私にピッタリの花でした。だってあの花の……ピンクのバーベナの花言葉は――『家族の和合』」  充希さんは肯定するように、とろりと瞳を和らげて頷いた。  不思議な人。でも畏怖(いふ)より、安心感の方が強い。  黒を背負って死を届けにくるのは死神だけれど、彼は黒に好かれた、救いの天使。
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