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ヴァンパイアキラーとの契約
「これが全ての真実で、彼女の遺した記録だ。気分はどうだい?」
癪に障る愉悦を含んだ問いに、俺は「……最悪ですよ」と呻いた。
双眸から溢れる涙が鬱陶しい。乱雑に掌で拭って、そのまま目元を覆った。
これは、彼女の死を悔んだ涙じゃない。
安堵、羨望、嫉妬。これまで必死に見ないふりをしていた己の本分が、圧倒的な強制力をもって眼前に叩き付けられたからだ。
自覚してしまった。いや、させられたのだ。
この憎ったらしい"ヴァンパイアキラー"に。
――俺は、彼女の死を肯定し、羨んでいる。
「……あなたの標的となるのは、"ヴァンパイア"だけじゃなかったんですか」
「他者である僕の血を求め、口にした時点で、立派な"ヴァンパイア"だ」
「……最初からわかってたって、どういうことですか」
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