ヴァンパイアキラーとの契約

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「僕もね、彼女と同じカフェにいたのだよ。あの時ね。昼食をとっていたのさ。……大きな通りが遮っているというのに、吸血が起きた瞬間、彼女の反応は誰よりも早かった。僕よりもね。そしてあまりにもただならぬ様子だったから、店を出た彼女を追ったんだよ。だが巧人も知っての通り、あの日僕は身が重くてね。追い付けはしなかったが、走りゆく彼女の横顔に『死への渇望』を感じた。そして彼女が噛まれた瞬間、確信したよ。理由はなんであれ、彼女は死にたがっているとね。それも只の死ではなく、吸血を所望していた。……巧人から彼女の過去を聞かされて、全てが繋がったよ。実に貴重な情報だった。さすがの僕も、初めての国で特定個人の身元調査は難しいからね」  つまり充希は初めから、彼女が"死"を望んでいると察知していた。  俺は、一言も聞いていない。 「……っ、どうして隠していたんですか」 「隠してたわけじゃないさ。訊かれなかったから、話さなかった。それだけだ。"取り調べ室"にまで連れ込んでおいて、何も問いたださなかったのはキミ達だろう?」 (っ、たしかに、そうだけど)
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