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「よく思い出してくれ。僕は一度も巧人に嘘はついていない。おまけに最初から、可能性は告げていたよ。言っただろう? 彼女は僕を頼ってきそうな気がすると。これは今すぐにでも指輪を用意して、永遠の愛を誓いあうべきだと思わないかと」
「!」
(あれは、彼女の死を想定して……!)
充希の指摘を皮切りに、脳裏では次々とこれまでの充希の言動が再生されていく。
ああ、そうだ。あれも、これも。
確かに充希は、"一度も"嘘をついていない。
なんなら全ての種明かしがされた今では、彼女が死を選ぶことを前提として話しているのだとさえ――。
(――くそっ)
握りしめた掌に、爪がぎりりと食い込む。
「放たれる前の"ヴァンパイア"を狩って、満足ですか」
「……そうだね」
充希が笑みを深める。
光を増した朝陽が、端麗な顔に濃い影を落として、彼の狂気を主張する。
「今、僕の心は想像し得る最大限に満ち足りている。そうさ、とても気分がいい。だが僕の心をこうして掻き立てているのは、美しきバーベナの死ではない。巧人、キミの"解放"を心から喜んでいるからさ」
「!」
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