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壇上で繰り広げられる空想劇の主人公さながら、俺よりも細い両腕が悠々と広げられる。
「気づいたろう? 巧人。キミと僕は同じだ。"VC"を求め、慈しみ、彼らを哀れんでは"最善"へと導く。愛ゆえに。その"最善"の中には、"死"も含まれているのだろう? なぜなら巧人は、彼らにとって"死"が"救済"になり得ると知っているからだ。おそらく、この国の誰よりもね」
充希の双眸が、栃内に向く。
「"VC"は、この世界における最大の被害者だ。けれども未だ大多数の人間にとって、畏怖の対象となっている。"吸血"後、運悪く生き残ったとて、その後の扱いに絶望し死を望む者は多い。とはいえやっかいなことに、彼らはその生命力の高さから、単純に"人"と同じ方法では死ねない。自分は"ヒト"であって"ヒト"ではないのだと突きつけられながら、悲惨な末路を辿る"VC"の、どんなに多いことか」
興奮に高ぶる瞳が俺に向いて、ふと和らいだ。
憐みの色を乗せ、恍惚と語る。
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