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「彼女は愛に満ちた"呪い"を受け、望まぬ"生"に縛り付けられていた。僕はその"呪い"を解き、彼女に自由を与えたに過ぎない。結果、彼女は選択した。自身にとっての"幸福"をね。そして僕もまた、"呪い"によって生かされている一人だが……巧人。キミもまた、同じなのだろう?」
「――っ!」
「本心ではその"生"などとっくに見限って、後を追いたいと願っている。だが遺された"呪い"のせいで、生き続けなければならない。これは僕の経験に基づく勘だが、その愛おしき誰かがキミを置いていったのも、"吸血"絡みなのだろうね。だから君は"VC"を慈しみ、"ヴァンパイア"を憎む。両者は似ているようで、全くの別物だ。その区別が出来る者は実に希少でね」
それと、もう一つ。
人差し指をたて、愉悦に弧を描く唇が、謳うように言葉を紡ぐ。
「巧人、キミは今、こうも思っているはずだ。もっと早く僕と出逢えていれば、その愛おしき誰かを"マリア"によって"救えた"だろうに――とね」
(……くそっ!)
奥歯をきつく噛み締め、両の拳を握りこめることで、弾けそうな感情を逃す。
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