ヴァンパイアキラーとの契約

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 腹の底が熱い。『はらわたが煮えくり返る』とは、正しくこの状態を指すのだろう。  だが全身を支配するこの感情は、"怒り"なのだろうか。  だとしたら俺は、一体何に、これほどまでの怒りを感じているのか。  我が物顔で人の本懐(ほんかい)(あば)き、雄弁(ゆうべん)を振るう憎たらしいヴァンパイアキラーにか?  それとも、奴の並びたてた戯曲を、"憶測"だと一蹴(いしゅう)出来ない自分にか?  ともかく僅かでも気を抜けば首を縦に振ってしまいそうで、俺はただ、必死に理性を手繰り寄せて充希を睨み続ける。  この部屋で話した言葉、行動。  全てが記録として残り、場合によっては"問題あり"として報告されてしまうからだ。  俺の組織での立場は、『面倒な任務に就かされた哀れな隊員』。  八釼も清も江宮も、俺が同じ"正義"の名の下に属していると信じている。信じてくれているのだ。  だから、駄目だ。俺は充希の問いに頷くわけにはいかない。  どんな苦難に見舞われようと誇りを持ち、この国の"VC"の為にとその身を投げうって職務を全うしている隊員達の為にも。  "VC"の"死"を、"救済"だなんて――。
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