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「どうした? 巧人。……ああ、そうか」
きょとんと小首を傾げた充希が、思い当たったように手をうった。
「すまない、伝えるのを忘れていた。この部屋にはカメラも、盗聴器も存在しないよ。音を受け記録を残す存在は、文字通り僕と巧人だけだ」
「――え?」
「キミのボスと交渉してね、取っ払って貰ったのさ。そうしなければ、巧人に本心を打ち明けてはもらえないと思ってね。僕としても、意志の共有を望むのは巧人ただ一人だ。その他に知らせてやる義理もない」
そう、だとしてもだ。
八釼さんが、監視の目を外した? 充希はともかく、遺体を残したままで?
馬鹿な。そんなはず――。
「――っ、本来なら、上は早急に彼女の遺体を回収したいはずです。なのに、待っている。おまけに外の護衛も清だけだ。そんな手薄な状況で、カメラまで外すとは思えない。"目"を放した隙に、遺体に細工をされる可能性だって――」
「"目"ならあるさ」
何を言う、とでも言いたげな顔で、充希は俺を指さした。
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