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ご機嫌な様子で頷いた充希は「ならば今が好機かな」と懐に手を遣った。
カーディガンの内側に、ポケットがあるようだ。
何やらゴソゴソと探しながら立ち上がると、俺へと距離を詰めてくる。
「少々手を借りてもいいかな、巧人」
「手……?」
不審に眉根を寄せながらも大人しく右手を差し出すと、カーディガンがら抜き出た手が、
「僕らの記念すべき日に、祝福を」
ぐるりと回された掌に、布地の小袋が落とされる。
紐で閉じられた、お守りよりもひと回り小さなソレは、彼から切り離したような漆黒色。
よくよく見れば、中央部分が丸く隆起しているような……。
「……なんですか、コレ」
「僕からの謝罪と、誓いを証明したプレゼントだ」
「証明? ……まさか、指輪ってことはないですよね」
「開けてみるといい。それはもう、巧人の手に渡った。キミのモノだ」
(勝手に乗せといてよく言う……)
本当に指輪だったなら、即刻クーリングオフしよう。
俺は鼻息荒く結われた紐を解き、中を覗き込んだ。
瞬間、息を詰めた。これは――。
「っ、"マリア"」
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