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「気に入ってくれたかい? 巧人にとっては、指輪よりも価値がある"証"だろう」
咄嗟に、声を弾ませる充希を睨め付けた。
「どうして」
「言った通りさ。巧人に黙って彼女に"救済"を与えてしまった謝罪と、僕らがこれから先の景色を共にすると誓いを結んだ祝い。そして――僕にとって、巧人が唯一無二だという証明だよ」
充希はそっと、栃内の眠るベッドに手をかけた。
「この国で"マリア"を所持しているのは、この部屋の者だけだ。僕と巧人、そして彼女。美しき"バーベナ"は既にその体内に取り込んでしまったから、残るは僕ら二人だね」
視線を俺に戻して、充希が軽く肩を竦める。
「巧人が到着する前、キミのボスから"照合用"にと提出を迫られたんだが、なんせこれはそう簡単に作れるような代物ではなくてね。申し訳ないが、丁重にお断りさせて頂いた。彼女に語った構造に嘘はないし、それは彼女を調べれば簡単に証明される。つまり渡さずとも僕が不利となる可能性はない。まあ、"照合用"というのも口実で、彼らは純粋に"マリア"のベールを暴きたいのだろうけどね」
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