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そして更に腹立たしいのが、俺のそうした憤怒をわかった上で、コイツは更に煽ってくるのだ。
「不要なら、返品するかい?」
(うがああ殴りてえ……!)
むしろ『ウチ式のバディ結成の儀式』だとか言って、一発お見舞いしてやるべきなのかもしれない。
だがいくら"相棒"の契約を交わそうと、充希が護衛すべき"VIP"であることに変わりはない。
「……貰っておきます」
小袋の口を閉じ、ひとまずベルト裏へとねじ込んだ俺を見て、充希が「そうかそうか、大事に愛でてくれ」と笑いをかみ殺しながら言う。
「返せっていったて、返しませんからね。後悔してもしりませんよ」
悔し紛れの挑発に、充希は緩く首を振って、
「僕は僕における、最善の選択をした。後悔などしないさ。そうだね――」
窓を見上げる、眩し気な双眸。
「巧人と僕が初めて共に迎えた、あの朝陽に誓うとしよう」
白んだ陽光が、充希を照らして黒の輪郭を浮かび上がらせる。
俺は一度、白に包まれた彼女の穏やかな眠りを見遣ってから、「……そうですか」と呟いた。
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