28人が本棚に入れています
本棚に追加
ケースの中に入ってるのは、栃内が死ぬ前日から鐘盛に遺品を受け渡した日までの、"隊員"としての報告書だ。
「……しょーもねー書き方してやがったら、ぶっ飛ばすかんな」
「ちゃんと真面目に書いてるって」
苦笑交じりに肩を竦めた俺を、剣呑な赤い双眸が見定めるようにして睨め上げる。
その間、ほんの数秒。清は納得したようにフンと鼻を鳴らして、摘まみ上げたケースをベルト裏へ収めた。
「……首なんてやらせやがって。腑抜けてんじゃねえよ」
「あー、あれは自分でやったやつだし、もう治ったよ」
「んなの見ればわかんだよ。つーか本気であんなヤツに切られたってんなら、俺がその首にトドメをさしてやる」
「ええ……」
無茶苦茶な。だが清らしいというか、なんというか。
ともかく、心配させてしまったようだ。
「……ありがとな」
小さく礼を告げた俺に、清はカップの淵を持つようにして、コーヒーをごくりと飲みこむ。
「にしても、わざわざ清が取りにくるなんて、珍しいな?」
通常、報告書のやり取りはドローンに任せている。
最初のコメントを投稿しよう!