28人が本棚に入れています
本棚に追加
こうして直接誰かがくるのは、極めて珍しい。
「……自分はいけねーからって、江宮のヤツがうっせえうっせえ」
「ああ……この首のこと、心配させちゃったからな。江宮にも大丈夫だって伝えておいてくれるか?」
「んなことわかってんだよ。つーか、いくらアイツがうるせえからって、それだけで俺サマが来るわけねえだろ」
と、清はカップをソーサーに戻し、
「アイツ、死んだぞ」
「アイツ……? それって誰の――」
刹那、俺の脳裏に彼が浮かんだ。
「まさか、アイツって……俺と充希さんを襲ってきた、あの彼か」
「ったりめーだろ。他に誰がいんだよ」
「っ、どうして」
清はチョコレートの包みをピッと口で破って、
「しらねえ。なにも残さねえで、急に死にやがった」
苛立ちの混じる歯が、口内でがりりとチョコレートを噛み潰す。
「急にってことは……脳梗塞とかか?」
「ちげえ。アイツ、ガチでしばらく"あの状態"で、取り調べるにも会話すら成立しなくてクッソ面倒だったくせに、五日目くらいから急にまともになりやがった。演技じゃねえ。精神鑑定でも白だ。疑いなく、正気に戻りやがったんだ」
最初のコメントを投稿しよう!