そうして彼は悠然と微笑んだ

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「…………」  おかしい。俺は不可解だと眉を寄せる。  これまで何度か"ああした状態"に(おちい)った容疑者を見てきた。  その中でもあの青年は、芯の中心部まで粉々に打ち砕かれているように思えたし、それこそ"再構築"には時間を要するだろうと長期戦を予感していた。  それが、たった五日で?  清はチョコレートを咀嚼しながら頬杖をつく。 「五日目を境に、気味悪いくれー素直になんでも話しやがった。ほぼ別人だな、ありゃ。手ごたえもクソもねえ。拘置所でも真面目で穏やかで、飯も全部食うようになった」  清が言葉を切った刹那、ソファーから注がれる、伺うような視線とかち合った。  席を外さなくてもいいのかい? そう問いたげな充希に、俺は問題ないと頷く。  清も気付いていたのだろう。が、特に触れることなく言葉を続けた。 「自殺だ。テメエで、舌を噛み切りやがった」 「――え?」
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