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「須崎のこともテメエが起こした事件のことも、こっちが聞いてねえ身の上話まで洗いざらい吐き出して、夕食も綺麗に食い終わった後だ。歌を、うたってたらしい。看守が気づいた。今日はずいぶんと機嫌がいいみたいだななんてボンヤリしてたら、やられたみてえだ」
「――っ」
あの青年がうたう、歌。
それはきっと、須崎に捧げていたに違いない。
安らかな眠りを祈る鎮魂歌だったのか、これからの出立を告げる、呼びかけの歌だったのか。
それとも、自身が"未練"になれなかった、贖罪だったのか――。
「――おやおや、それは」
声を発したのは、充希だ。
清が顔だけで肩越しに振り返る。
「なんとも残念で、痛ましい。どうか彼の眠りに、幸多からんことを」
憐れんだ面持ちで祈る充希に、清はすうと双眸を細めて、
「……これも、アナタの狙い通りなんじゃないですか」
「まさか。僕には彼の死を望む理由がないし、ましてや死へと誘導した過去もない。……僕もだが、また巧人を逆恨みして襲ってこられても困るからね。少しばかりきつい"仕置き"をしたが、それだけだ。心から哀悼の意を捧げるよ」
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