そうして彼は悠然と微笑んだ

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「……そうですか」  清の目が再び、俺に向く。 「テメエは……って、聞くまでもねえな」 「え?」 「アイツは"自殺"だ。……意味、わかってんな」  どこか(とが)めるような眼に、俺は「……ああ」と頷く。  清は、気付いているからだ。俺の胸中でたゆたう自責の念を。  ――彼の死を許したのは、俺だ。  "壊されて"しまった彼を本気で哀れに思うのなら、清が連れて行った後にもアプローチする方法はいくらでもあった。  それこそ、キミに落ち度はない。  須崎の死は全て俺の責任だと言ってやれば、彼は復讐心を(かて)に"生"にしがみついただろう。  だが、しなかった。俺は切り捨てたのだ、彼を。  けれどもこうして俺が自身に罪の証を刻むことを、清は昔から、嫌悪している。  全ての"罪"を救えるつもりか、思い上がってんじゃねえ。  ――テメエは"神"じゃねえだろう、と。 「……今回の"吸血"事件は、関係者全員死亡で終いか。報告書、けっこう頑張って書いたんだけどな」
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