そうして彼は悠然と微笑んだ

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 充希にねだられ八釼さんに電話をかけた、あの夜がフラシュバックする。  そうだ。あの時確かに、八釼さんは何かを確認していた。  何か。すなわち――。 「巧人ならば僕が言わずともわかっているだろうが、バーベナと落ち合ったあの夜、部屋にはまだ花瓶も時計も"そのまま"だったよ」  追い打ちをかけるような充希の言葉に、憶測が真実へと変わる。 「――八釼さんは、知ってたのか。栃内さんが"死"を望んで、充希さんを――"ヴァンパイアキラー"を呼んだって」 「つっても、あの"毒りんご"は想定外だったみてーだけどな。わかったんなら、クソみてーな被害妄想に酔ってんじゃねえぞ。仕事しやがれ」  じゃあな、と残して、清が扉から帰っていく。  八釼サンの決定は、すなわち上の意思。つまり、この国は許したのだ。  "ヴァンパイアキラー"が己の牙を(うと)む"吸血鬼"を、その血をもって"救済"することを――。  スモークガラスに映る影が見えなくなる。俺は微かな予感に、問いかけた。 「充希さんは、知っていたんですか?」
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