そうして彼は悠然と微笑んだ

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「直接的な種明かしはされていないな。つまり僕としても今の今まで、確実な正答は持ち得なかった」 「あの時、わざわざ上に電話をさせたのって……このためですか」 「あれは予防さ。一種の賭けでもあったけれどね。言ったろう? 騙し討ちのような形になってしまったと。今回、巧人は何も知らずに"巻き込まれた"だけだ。それを"うっかり"他者の思惑(しわく)によって、当事者にされては困る」 「……つまり、すべて充希さんの思惑(おもわく)通りってことですか」 「すべてではないさ。だが願いを叶えるには、入念な準備が必要だからね。今回は幸運の女神に好かれた。ありがたい限りだな」 「…………」  なんだろうか。この、腑に落ちない感じ。  色々と思うところはあるものの、深く考えれば考えれるほど充希の"思惑通り"のような気がして、俺は思考を放棄することにした。  今は事実だけを飲み込もう。  俺の目の前には、紛れもなく俺の意志で契りを結んだ黒き"ヴァンパイアキラー"が。  そして俺のベルト裏には、彼の血で造られた(あか)き"マリア"が収められている。
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