そうして彼は悠然と微笑んだ

20/20
前へ
/254ページ
次へ
 途端、充希が小さく噴き出した。  昼下がりの喫茶店で、くだらない冗談を耳にしたようにクツクツと笑う。 「いやだなあ、巧人」  とろりと緩んだ紫の瞳。 「巧人も言ってたように、"吸血鬼(かれら)"は化け物じゃない。ウイルスに侵された感染者――つまり、"ヒト"だ」  充希がマグカップを置く。  彼は舞台に立つコメディアンのごとく、どこかおどけた調子で両腕を広げた。 「僕は"ヴァンパイアキラー"。血を求めた哀れな"感染者(ヴァンパイア)"を殺す、"殺人鬼(キラー)"だ」
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加