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面倒なことにならなきゃいいが。
エレベーター内でセキュリティーカードを通し、最上階のボタンを押す。
降りて、閉じられたガラス扉の横。一部の隊員にしか通達されていないセキュリティーコードを入力し、カメラを覗き込んで虹彩認証を受ける。
甲高い電子音が響き、扉が開く。
「どうぞ」
俺達の動きに合わせ、頭上のカメラが動いた。
歩きながら視線で追っていた彼が、
「"連れ"の管理はあのカメラで?」
「それと、赤外線センサーによる感知で」
「ここから出る時は、今と同じ手順を?」
「ええ」
「なるほど。先程よりも随分と強靭な"檻"だ」
肩を竦めて茶化す彼の背後で、八釼が顔を強張らせた。
無理もない。今しがた会ったばかりでは、嫌悪を滲ませた糾弾に聞こえるだろう。
だがおそらく、彼はただ現状を楽しんでいるだけだ。
俺は嘆息交じりに、
「職業柄、いつ攻撃的な"VC"の襲撃を受けるかわかりませんからね。見ての通り、ここで働く隊員の多くは"N"ですから、安全面に対しては万全を期しているんです」
「だが決まった者しか入れないのだろう?」
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