特異機動隊本部にて

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「有事はシェルターとして活用されますが、まあ、その辺の詳しい説明までは勘弁してください。いくら"貴方"の質問とはいえ、すでに喋りすぎなくらいですから」 「それもそうだな。巧人はもう少し、危機感を持った方がいい」 (いや、だからアンタが訊くから"接待"してるんでしょうよ……!)  上司の手前、笑顔で奥歯だけ噛み締めて、俺は階奥に設えられた応接室の扉を開いた。  通常の二部屋分の広さを有するそこには、シンプルながらもモダンなデザインのローテーブルを中央に、ダークブラウンのソファーが客人を待っている。  壁に飾られた大判の絵画には、天使が一枚。国家機密ゆえ、口が裂けても言えないが、この天使には赤外線センサーによる録画と録音装置が組み込まれている。  入室した二人がそれぞれ腰掛けたタイミングを見計らい、 「お茶の用意をしてきます」  告げて扉を閉めようとすると、 「お茶ならさっき十分に楽しませてもらったからね。不要だよ。それよりも手早く要件を済まそうじゃないか」  ……阻まれてしまった。  ちろりと横目で八釼を見遣ると、いくな、と訴える眼で小さく首を振られてしまった。
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