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いやいや、お茶も出さんでいいんですか先輩。
思ったが、俺は嘆息交じりに頷いて、開いていた扉を閉めた。
あの彼の要望はともかく、配属時から語れないほど世話になっている先輩が、こんなにも必死に引き止めているのだ。
いける筈もない。
「……では、俺はここで」
「なぜだ? こっちに座ればいい」
「いえ、それは勘弁してください」
「ふん? それはもしかして、キミの仕事場におけるルールというやつか?」
「ええ、まあ。そんな所です」
「わかった。よし、では"交渉"に入ろうか」
膝上で両手を汲んだ青年が、にこりと人の良い笑みを浮かべる。
八釼はこれでもかと背を正して、「……では」と低い声を発した。
「本来は総理大臣が直接ご挨拶に伺うべきところですが、いかせん全てが急なため間に合わず申し訳……」
「ああ、そういう堅苦しいのはいい。単刀直入にいこう。僕がこの国に滞在するにあたって、"キミ達"の望む条件はなんだ?」
「……人々の混乱を避けるため、貴方様が来日されている旨の発表は控えたいと考えております」
「なるほど。つまり、"大人しく"していろということか」
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