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あからさまな安堵を浮かべて微笑んだ八釼を、前のめりになった彼が「ただし」と制した。
「条件を変えてもらおう。まず、衣食住の提供は必要としない。僕はやりたいようにやる。つまり、滞在中における"自由"を保障してほしい。つまり、"護衛"も不要だ。自分の身は自分で守るのでね」
「! しかし、"万が一"の際に何もしていなかったでは、国の沽券に関わります。これまで数多の"国"を渡り歩いていらした貴方様なら、お分かりでしょう?」
「もちろん。それと、衣食住はともかく護衛という名の"監視"を拒否されては、キミの進退に関わりかねないということもね」
「!」
八釼が目を見張る。図星。これで完全に主導権は、彼のものだ。
(……やはり一筋縄ではいかない、な)
思いながらも俺は沈黙を保ち、見守るに徹する。
意地悪気に口角をつり上げた彼が、「そこでだ」と背をソファーに埋めた。
おもむろに右腕を上げ、指をさした。俺だ。
楽し気に細んだ紫の瞳とかち合う。
は? え? ちょっとまて、かんっぺきに嫌な予感が――。
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