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「巧人は表向き、"VC"向けの相談屋をしているのだろう? なら滞在中の間、彼の元で世話になりたい。これなら巧人という"護衛"の"監視"付きだ。どうだね。この条件で手を打たないか」
(いやいや、勘弁してくれ! 要人の護衛ってのはともかく、こんな厄介な相手を四六時中相手にするなんて――)
心中冷や汗。
無言ながらも必死に目で拒否を訴えようとして、八釼を見る。
と、彼は眉間に深い皺を刻んで、難しい顔のまま床を見つめていた。
考えているのだろう。そう、考えてくれているのだ。
俺一人の犠牲で成り立つ、きっと他の誰からなら即座に頷くであろうこの"取引"の是非を。
(……そういう人だもんなあ、八釼さん)
誰よりも真摯で、部下思いで、けれどしっかり策士で。
この人が居たから、今の俺がある。そしてきっと、これからも。
「……貴方様のご提案は、あまりに部下の負担が大きい。本件は一旦持ち帰らせて頂いて、また後日ご相談を――」
「いいですよ、八釼さん。その条件、飲みましょう」
「! だが、それではお前が」
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