ヴァンパイアキラーの講義

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ヴァンパイアキラーの講義

 カードキーを通し、オートロックの分厚い扉を開くと、期待に浮足立った背中が靴を脱いで奥へと歩を進めた。  左右で整列するノブ達には目もくれず、真っすぐ向かった王座のそれへと手をかけ、迷いなく開け放った扉の先。青年が「素晴らしい!」とその瞳をいっそう輝かせ、振り返る。 「とても素敵な家じゃないか。おまけにまるで住み始めのように綺麗だ。巧人は随分と掃除が上手いんだな。いつからここに住んでるんだい?」 「……今日、というか今からですね。それと、どちらかというと掃除は得意じゃない方です」  あまりの場違い感に恐縮しながら部屋を覗き込んだ俺は、その内装を見て更に胸中が重くなった。  なんだこれ。いったい何処のモデルルームだ。  マンションとは思えぬ広々としたメインダイニングには、映画館と見間違えそうな壁掛けのテレビ。  囲むソファーは高級ながらも上品な白さでどことなく安心感があり、たっぷりと置かれたクッションにダイブすれば、十分気持ちよく寝れるだろう。
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