28人が本棚に入れています
本棚に追加
/254ページ
ヴァンパイアキラーの講義
カードキーを通し、オートロックの分厚い扉を開くと、期待に浮足立った背中が靴を脱いで奥へと歩を進めた。
左右で整列するノブ達には目もくれず、真っすぐ向かった王座のそれへと手をかけ、迷いなく開け放った扉の先。青年が「素晴らしい!」とその瞳をいっそう輝かせ、振り返る。
「とても素敵な家じゃないか。おまけにまるで住み始めのように綺麗だ。巧人は随分と掃除が上手いんだな。いつからここに住んでるんだい?」
「……今日、というか今からですね。それと、どちらかというと掃除は得意じゃない方です」
あまりの場違い感に恐縮しながら部屋を覗き込んだ俺は、その内装を見て更に胸中が重くなった。
なんだこれ。いったい何処のモデルルームだ。
マンションとは思えぬ広々としたメインダイニングには、映画館と見間違えそうな壁掛けのテレビ。
囲むソファーは高級ながらも上品な白さでどことなく安心感があり、たっぷりと置かれたクッションにダイブすれば、十分気持ちよく寝れるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!