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(……そういうもんなのか?)
彼があまりに自信満々に言うので、俺は「……わかりました。ひとまずそうしましょう」と頷いた。
不都合が出たら、また調整すればいい。願わくば、そうなる前に彼が出国し、お役御免となれるよう。
「今日は仕事場にはいかないのかい?」
「え? ええ、はい。もうすぐ陽も落ちますし、今日は臨時休業ってことで」
「そうか。なら巧人の"守られた城"へ伺うのは、明日だな」
「城……」
仕事場を揶揄するには大げさな呼称に、思わず繰り返し疑問を浮かべる俺。
彼は苦笑浮かべてから、申し訳なさそうに眉根を寄せた。
「……家というのは本来、主に寛ぎを与える場だろう? 僕の我儘で、キミから大切な"城"を取り上げてしまった。すまない」
(……確かに。そもそもアンタがあんな提案をしなけりゃ)
だがそんな恨み言も、しおらしく下がった眉尻と子犬のごとき瞳に、つい、まあいいかなんて。
「……俺っていう"監視"が付くのなら、政府からの提案とそう大差ないんじゃないですか? むしろ、衣食住の提供っていう確約があったほうが、好条件だったんじゃあ」
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