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「この国に来たのは、仕事というより個人的な興味が理由でね。せっかくのバカンスに知らない者が付きっ切りでは、リラックスなど到底不可能だろう?」
「……俺も初対面ですが?」
「巧人はこの国において、僕の最初の"仕事"に立ち会った。"他人"ではなく"戦友"さ」
(つまり俺は、貧乏くじを引いたって訳か)
例えば須崎が事件を起こさなければ。例えば、俺があの場に立ち会っていなければ。
どれか一つピースが欠けていれば、こんな厄介事に巻き込まれずに済んだらしい。
逆に言えば、俺をこの状況に導く全ての条件が"揃ってしまった"ということだ。
「どうだい? 運命を感じるだろう?」
げんなりとした俺の胸中を読んだかのように、キラキラと笑顔を輝かせて彼が問う。
「これで巧人が"VC"だったなら、迷わず求婚しているのだけどね。残念だ」
「運命の相手は別にいるってことですね。安心しました。ああ、俺は玄関横の部屋を使わせて頂くんで、他の部屋はお好きにどうぞ」
「ドライだねえ、巧人は」
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