ヴァンパイアキラーの講義

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 けらけら笑って、彼は「それじゃあ、その向かいを僕の私室に。それ以外は後々考えよう」とクッションを置いて立ち上がった。  食器棚から適当にマグカップを一つ取り出すと、蛇口から水を入れ、喉を潤す。 「……あそこにウォーターサーバーがありますよ」 「おや、本当だ。気が付かなかった」 「……お茶、淹れましょうか?」 「いいのかい? 巧人の淹れる茶は美味かったからね。お願いするよ」  今の俺には彼の"世話役"という任もある。茶ぐらい淹れるさ。  俺は台所へと向かい、戸棚を数か所開いた。  見つけたのはパッケージからして、いかにもお高そうな緑茶。  無遠慮に素手で角を開け、おそらくいい所の作だと思われる急須に目分量で茶葉を入れた。ウォーターサーバーから湯を注ぐと、湯気と共に深緑の香りが広がる。  蒸らしている間に食器棚から湯呑を二つ選んで、急須を軽く回してから交互に注いでいく。  俺が淹れているのだから、ご相伴(しょうばん)にあずかっても罰は当たらないだろう。  彼は俺の対面に立ち、肘をカウンターに乗せて俺の手元を興味深げに見遣りながら、おもむろに口を開いた。
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