ヴァンパイアキラーの講義

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「神の審判を待つ彼女は、どうなったんだい?」 「一命を取り留めたまま、三時間のボーダーラインを越えたそうですよ。現在、厳重な警備体制の下、意識の回復待ちです」 「そうか。不条理に散る花が減ったのは喜ばしい。が、また新しい"VC"が生まれてしまったな」  呟く彼の瞳に、怪しい光。思わず止まった急須の先から、最後の一滴が滴り落ちた。  描かれた波紋が消え失せる様を見届けてから、俺は湯呑の一つを、彼に差し出した。 「……名のある"ヴァンパイアキラー"にとっては、例え被害者でも排除対象ですか?」 「ん? ああ、そうか。巧人、どうして僕が"VCキラー"ではなく"ヴァンパイアキラー"と名乗っているか、わかるかい? そう、僕が標的とするのは、他者の血を求めた"ヴァンパイア"だけだからだ。哀れな"ウイルス感染者"ではなくてね。今後彼女が"ヴァンパイア"に成り下がらない限り、僕の血が彼女を喰らうことはない。どうだい? 安心しただろう」  にっこりと無邪気に笑む顔には、先程までの剣呑さはない。  嘘ではない。そう直感した俺は、素直に「疑ってすみませんでした」と頭を下げた。
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