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彼は気分を害した風もなく、「いーや」と小さく吹いてから、俺の淹れた茶を飲む。
「例えば僕が巧人の懸念通り、見境なく食い散らかす狂犬だったならば、警戒するに越したことはないからね。キミ達"警察"には、国民を守る義務がある。巧人は職務を全うしただけだ。そんなことより、ああほら、せっかくの美味い茶が冷めてしまうよ」
(……思っていたより、変人ではないのかも)
「……いただきます」呟いて、湯呑を持ち上げた俺に、
「召し上がれ」彼が応える。
いや、淹れたのは俺だけども。そんな突っ込みを緑茶と共に飲み込む。
うん、美味い。さすがよく分からないけど、高そうな茶葉。
「……モレッティさんて」
「充希でいい」
「……充希さんて、いくつなんですか」
彼は軽く肩を竦めてから、
「ええと、今年で三十六だったかな」
「そうですか、三十……さんじゅうろくっ!?」
(俺より八つも上じゃないか!)
驚愕を隠すことなく絶句する俺に、彼は呆れたように息をついた。
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