28人が本棚に入れています
本棚に追加
/254ページ
「須崎……あの、充希さんが求婚された路上の男の死因は、やっぱり"ゼロ-ウイルス"を摂取したからですか」
「そうさ、彼の摂取した僕の血が、彼の"V-2"を攻撃し、改変された遺伝子を元に戻そうとした。急激な変異は壮絶な痛みを伴い、まさに命がけ……それもまた"V-2"感染時と同じだが、なんせ二度目の"変異"だからね。耐えられないのさ、残念ながら。幸運の女神が微笑む確率は、宝くじで一等を当てるよりも遥かに低い」
……つまり、ほぼ確実に絶命するということか。
理解すると同時に、小さな疑問が湧き上がってきた。
なぜ政府は、世界は、こんな"危険人物"の自由を容認してきたのだろう。それどころか時には"国賓"として迎え入れ、時には、膨大な金額で雇い入れ。
いや、答えは聞かずとも明確だ。
治療方法が存在しない今、"VC"は駆逐されるべき悪。それが、共通認識だから。
腹の奥が、黒く冷え行く感覚。
(……犯罪率でいうのなら、"VC"も"N"もそう大差ないってのに)
果たして"悪"なのは、一体どちらか。
「……巧人は本当に、"VC"が好きなんだな。いや、"人"が嫌いなのかな」
最初のコメントを投稿しよう!