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「え?」
俺の答えを待つことなく、楽し気に笑んだ充希が再びソファーに身を落とした。
「"VC"を保護すべき立場であるキミにとって、僕はとんだ危険因子だろう? しっかり"監視"しておくといい。後悔しないようにね」
これで話は終わりだ。そう示すかのように、充希はソファーに並べられたクッションで遊び始めた。
監視。そう、俺の任務のひとつ。わかっている。今や俺の"眼"は俺のものではない。八釼の、そして、この国と共にある。
猫のように転がる彼を見遣りながら、俺は立ったまま冷めた緑茶を口に含んだ。
動揺、だろう。これは。
先程の、彼の言葉が脳裏で反芻される。
『巧人は本当に、"VC"が好きなんだな。いや、"人"が嫌いなのかな』
(……八釼さんですら、こうも簡単には気付かなかったのに)
彼の言葉は真実だ。だが、それが全てというわけでもない。
とはいえ訂正する気もない。むしろ、そう思ってくれていたほうが、好都合か。
「どうだい巧人。キミの茶は美味いだろう?」
ごろりと腹ばいに回転した充希が、頬杖をついて尋ねる。
いや、だからなんでアンタがそんなに得意げなんだ。
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