望まぬ会遇

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 政府はこれを受け、感染者には"人工血液"と"サプリメント"を配布し、一日一度の"自己輸血"を義務化した。  現状、世界的にこうするしか"対策方法"がないからだ。確実なワクチンも、安全な治療法もない。  そしてこの"V-2"感染者は、Vコード保持者として、"VC"と呼ばれている。 「……やあ、こんにちは」  出来るだけ相手を刺激しないよう、慎重に声をかける。  "ソイツ"は不快を隠さず眉根を寄せ、 「あ? アンタ誰?」 「初めまして。俺は野際巧人(のぎわたくと)っていって、近くで"VC"専門の相談所を開いてる者です」  野際巧人。それがこの任務につくにあたって俺に与えられた、"世間"での名だ。  免許証も、住民票も、全てにこの名が記載されている。  上から指示された"設定"では、両親の離縁により苗字が変わった、だそうだ。  まあ、よくある上に詮索するにはセンシティブ。おまけに実際の両親は既に他界済で確認のしようがないという点においても、一番最もらしくて都合の良い理由だろう。
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