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「あ……ごめんなさい、私ったら。……"VC"の側に寄るなんて、落ち着きませんよね」
すっかり忘れていたと苦笑する彼女に、俺は「まさか」と首を振って椅子へと歩を進める。
「先ほどお伝えしました通り、私は"VC"専用の相談屋です。……"VC"を恐れる"N"の方々が多いのは知っていますが、私は"VC"も"N"も、同じ"人"だと思っています」
「……そう、でしたか」
おそらく彼女は、"VC"を恐れる"N"だったのだろう。無理もない。というか、大半がそうだ。
複雑そうに視線を落とした彼女の横で、簡易な丸椅子の横に立った俺は「座ってもいいですか?」と再び重ねた。
頷く彼女に礼を告げて、腰掛けた刹那。勢いよく扉がスライドした。
「やあ、初めましてお嬢さん。気分はどうかな? なんて、訊くまでもないか。どんなに美しくても、籠に閉じ込められた鳥は不自由なものだろうからね」
ノックもなく無遠慮に開いた扉から入ってきた充希が、これまた躊躇のない足取りで、呆気にとられている彼女へと近づいた。
手には花束が一つ。鮮やかなピンクの花弁が目を引くそれは、小さな花が球体のように寄り集まっている。
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