バーベナの目覚め

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「これはちょっとしたプレゼントだ。本当は薔薇が良かったんだが、香りの強い花はまだ刺激になるだろうからね」  パチリと飛ばされたウインクに、花束を受け取った栃内が「え? あ、はあ」と戸惑いを見せた。 (……持ち込みは禁止って伝え忘れてた)  まあ、"国賓"の私的な好意では、上も咎められないだろう。部屋外に立っている警備係が許したのが、いい例だ。  というか、なにが『いきなり多人数で押しかけて、彼女を怖がらせてはいけないからね。僕は少し経ってから入るよ』だ。  ただ花を買いに行きたかったが為の、口実じゃないか。それならそうだと言ってくれれば。 (……"警護対象"なんだから、一人で勝手にうろつかないでくれ)  わかっている。自由奔放の代名詞でもある充希の言葉を鵜呑みにして、警備係がいるから大丈夫だろうと迂闊に了承してしまった俺の失態だ。  そう頭で理解はしていても、どうにも納得いかなくて、充希を非難の眼で見遣る。  直後、気付いた充希が肩を竦めた。どうやら意図は伝わったらしい。 「すまなかったよ、巧人。ちょっとした"うっかり"だ」
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