バーベナの目覚め

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 くそ、相変わらず余計なことを。思ったが、今はこの自由人を咎めている場合ではない。  彼女から伝わる、落胆の気配。俺は即座に口を開き、 「目覚めたら"VC"になっていた。誰だって動揺します。仕事柄多くの方の"目覚め"に立ち会いましたが、中には絶望にくれ泣き叫ぶ人だっていました。けれど忘れないでください。心臓は、命は、動いているんです。"VC"になったとて、輸血さえしていれば、普通の人と同じ生活が送れます。貴女は、生き残ったんです。この先の人生を、歩んでいけるんです」  "吸血鬼化ウイルス"は現状、不治の病だが、一度"VC"として目覚めることが出来れば、ガンのように身体を(むしば)み命を奪う病気ではない。  だから俺は、願望を込めて言うのだ。 「今この瞬間も、世界各国で沢山の人達が、治療薬開発に向けて研究に励んでいます。どうか、希望を捨てないでください」  言葉に、栃内が小さく瞠目した。  躊躇いがちに視線を落とす。 「……ええ。そう、そうですね。私のこの心臓は動いていて、こうなった以上……人よりも長く生きるのだから」
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