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「ちょっ、違いますそういう意味じゃないですから! 本当に、ただ純粋に、些細な事でも気にせず使ってくださいって意味ですからね!」
誤解だと慌てて両手を振ると、栃内は噴き出して「はい、わかってます」と頷いた。
良かった。まったく、なんてことを言うんだ。
誰もかれも、アンタみたいに恋愛脳だと思わないでほしい。
薄く息を吐き出したその時、扉がコツコツと小さく鳴って、重厚な扉が横にスライドした。
細く開いた隙間から、警備員が顔を覗かせる。
「時間です」
感情なく端的に告げ、再び閉じられた扉。
「なんと。楽しい時間はあっという間だな」
充希は肩を竦めると、心底残念そうに眉根を寄せ、
「そうだ、すっかり忘れていた。せっかくだから贈ったその花を、この部屋に飾ってもいいだろうか?」
「あ、はい。ありがとうございます。後で看護師さんにお願いを――」
「いや、それまでキミに抱かれているなんて、あまりに羨ましい。巧人、すまないがこの花を活けてくれないか? 自分でやりたい所だが、なんせ僕はすこぶる"不器用"でね」
(……確かに。この人に任せて、うっかり花瓶を割られても困るな)
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